2026年7月21日、猛暑日の午後。呉の事務所を昼過ぎに出て、山を越えて熊野道路、そこから海田大橋を渡り、広島市南区へ——本日の出張買取のご依頼は、一軒家からマンションへの引越し整理でした。事前にお電話でご予約をいただいていた買取で、あらかじめお伺いする時間もお約束済み。ハイエースの外気温計は、動き出す前からすでに真夏の数字を指しています。
本日、広島市南区のご依頼者様のお宅でお譲りいただいたのは、講談社学術文庫・ちくま文庫・岩波文庫・ちくま学芸文庫を軸とした文庫250冊と、単行本・ムック本250冊——あわせて約500冊のご蔵書。そしてそのなかに、本日の主役級と呼ぶべき一冊——柚月裕子『孤狼の血』(KADOKAWA・2015年初版)、著者直筆サインに落款印付きの本が混ざっていました。呉が舞台の映画・小説の本たちが、呉から広島市南区まで走ってきた古本屋の目の前に集まってくる——そんな不思議な巡り合わせのある1日でした。
この記事でわかること
・2026年7月21日、猛暑日の広島市南区・引越し整理買取の記録
・呉から広島市南区までの熊野道路〜海田大橋ルート(約1時間弱)
・一軒家から中心部マンションへの引越しに伴う蔵書ダウンサイジング
・講談社学術文庫・ちくま文庫・岩波文庫を中心とした文庫250冊の内訳
・単行本・ムック本250冊(現代思想・エッセイ・歴史・小説)の内訳
・柚月裕子『孤狼の血』著者直筆サイン+落款印付き本の話
・呉ロケ作品3本(孤狼の血・この世界の片隅に・海猿)と事務所の近所の話
電話でのご予約、一軒家からマンションへの引越し整理
ご予約のお電話をいただいたのは、少し前のこと。「一軒家から中心部のマンションへ引越すので、蔵書の整理をお願いしたい」——引越し整理の買取では、しばしば伺うご事情です。一軒家の書棚から、マンションの限られた収納へ——本の総量を、暮らしのスケールに合わせて絞り込んでいく作業。それは単に「捨てるかどうか」ではなくて、「これから先の暮らしのなかで、どの本を手元に残すか」を選び直す時間でもあります。
お電話で日程と冊数の概略を伺い、当日の時刻をお約束。「文庫が結構ありまして、単行本もそこそこ」という事前情報から、ハイエースの荷室に十分な余裕を確保しての出発です。引越しのタイミングは、ご依頼者様のご都合が最優先。当店としては、その日程にきっちり合わせてお伺いすることを、いつも心掛けています。
昼過ぎ、呉の事務所を出て——熊野道路から海田大橋へ
昼過ぎ、呉の事務所を出発。呉から広島市南区へ向かうときの、店主のいつものルートは熊野道路(広島呉道路)経由です。呉市街を抜けて山を越え、熊野町へ抜ける有料道路。トンネルと切り通しをいくつも越えていく山越えのルートで、車内の外気温計は、山の中に入ると少しだけ下がります。もちろん、それでも猛暑日は猛暑日ですが。
熊野を抜けて海田町方面へ下りていくと、次に待っているのは海田大橋。広島湾の一角を跨いで広島市南区へ向かう橋です。橋を渡り切って、広島市南区へ——呉から1時間弱、山越えと橋を組み合わせたルートを走り抜けて、ご依頼者様のマンションへと車を向けます。
広島市南区・クーラー全開のリビング
お約束の時刻、広島市南区のご依頼者様のお宅に到着。今回お伺いしたのは、これから引越されるほうのご自宅——一軒家です。中心部のマンションへ移られる前の、これまでお住まいの一軒家のほうへお伺いして、蔵書を拝見する形になりました。
お宅にお邪魔すると、クーラーが全開。窓の外は猛暑日の陽射しがぎらついているのに、リビングの中は快適そのものです。夏場の出張買取では、お客様のクーラーのご配慮に本当に助けられます。汗をかいた身体で本と向き合う時間が、それだけで数段楽になるのです。感謝しかありません——毎回そう思います。
平積み500冊との対面
リビングには、本が平積みで整然と出してくださっていました。文庫は文庫、単行本は単行本と、大まかにジャンル分けもされていて、査定に入りやすい形。引越し整理の準備をなさっているだけあって、蔵書の全体像が最初のひと目でつかめる、そんな並びでした。
ざっと拝見して、文庫が約250冊、単行本・ムック本が約250冊——あわせて約500冊。それぞれの山を、これから一冊ずつ丁寧に拝見していきます。
文庫250冊——講談社学術文庫・ちくま文庫・岩波文庫の並び
まずは文庫の山から。手を伸ばして一冊ずつ拝見していくと——これは、はっきりと「読み手のいる書棚」だと、すぐに分かりました。
① ちくま文庫・ちくま学芸文庫
ちくま文庫からは、山田風太郎、養老孟司、内田百閒、吉本隆明、都築響一——さらに長井勝一『「ガロ」編集長』など、戦後日本の文芸・思想・サブカルチャーの重要な書き手たちの本が並んでいました。ちくま文庫は、単行本で出た評論・エッセイ・伝記・回想録を文庫化してくれる貴重なレーベルで、一冊一冊が「単なる娯楽書」ではなく、その分野の一次資料に近い重みを持つ一冊になっているものが多くあります。
ちくま学芸文庫からは、ニーチェ全集(上下)と、丸山眞男セレクション。ちくま学芸文庫は、学術書・思想書の古典を手に取りやすい形で文庫化してきた、日本の教養層に長く支持されているシリーズです。この二つがきちんと入っている書棚は、思想・哲学を継続的に読んでこられた方の書棚——古本屋の目にはそう映ります。
② 岩波文庫
岩波文庫は、柳宗悦『手仕事の日本』、幸田露伴『五重塔』、松尾芭蕉、志賀直哉——赤・青・緑・黄の帯色が入り混じった、日本文学と思想の名著群。岩波文庫の並び方には、その人の関心の広がりがはっきり出ます。今回のお宅は、民藝・日本近代文学・古典・思想の四方向へ均等に伸びる、バランスのよい岩波文庫の並びでした。
③ 講談社学術文庫
講談社学術文庫では、金谷治『孔子』、養老孟司『形を読む』、朝永振一郎、高島俊男、ドナルド・キーン——中国思想・生物学・物理学・日本語論・日本文化論と、ジャンルを横断する知的関心が、この一棚だけでよく見えてきます。講談社学術文庫は、学術書の文庫化として長く読者に信頼されてきたレーベルで、専門書を「携帯できる古典」にしてきた存在です。
——文庫の山の全体を眺めてみると、「学術系文庫を軸に、思想・哲学・文学・民俗・科学を横断的に読んでこられた書棚」という輪郭がはっきり見えてきます。この輪郭を持った書棚は、当店の目にはとても頼もしく映ります。次の読者へ、しっかりお繋ぎしていきたい並びです。
単行本・ムック本250冊——現代思想からエッセイ、そして小説へ
もう一方の山、単行本・ムック本の250冊。こちらも手を伸ばしていくと——文庫の書棚と地続きの世界が、単行本のスケールで広がっていました。
- 小池龍之介——現代の仏教エッセイ
- 池谷裕二——脳科学の啓蒙書で知られる書き手
- 池内紀(2冊)——ドイツ文学・エッセイの名手
- 鶴見俊輔(3冊)+黒川創『鶴見俊輔伝』——戦後日本の思想を代表する哲学者と、その伝記
- 半藤一利+出口治明『明治維新とは何だったのか』——昭和史の半藤一利と、教養主義の出口治明の対談による、幕末〜明治維新をめぐる一冊
- 山田無文『十字図』——臨済宗妙心寺派の禅僧・山田無文の著作
- 太田猛彦『森林飽和』(NHKブックス)——日本の森林と環境をめぐる一冊
- 磯田道史(2冊)——歴史エッセイの人気作家
- 上野千鶴子——社会学・フェミニズム
- カルロ・ロヴェッリ『時間は存在しない』——現代物理学の一般書
- 盛永審一郎——生命倫理学
- そして、柚月裕子『孤狼の血』(KADOKAWA・黒帯赤帯の単行本)——本日の主役級はこの山の中に
——現代仏教、脳科学、ドイツ文学、戦後思想、昭和史、教養史、禅、森林環境、歴史エッセイ、フェミニズム社会学、現代物理学、生命倫理、そしてハードボイルド小説。これだけの領域を、一つの家の書棚で受けとめてこられたという事実に、少し圧倒される思いでした。
本日の主役級——柚月裕子『孤狼の血』著者直筆サイン+落款印
単行本の山を拝見していく途中、ふと手が止まったのがこの一冊。柚月裕子『孤狼の血』——KADOKAWA、2015年8月刊の初版本。表紙は黒地に赤い帯という、この作品の存在感をよく伝える装丁です。
そっと開いてみると——扉のページに、銀色の筆文字で書かれた著者直筆サイン。そして、その脇に朱色の落款印——「柚月」と読める篆書体の印章がきっちりと押されていました。単なるサイン本ではなくて、作家がじっくり時間をかけて書かれたサイン本——サイン会か、あるいは何らかの刊行記念のイベントでの一冊なのだろうな、と。
『孤狼の血』は、2015年に第69回日本推理作家協会賞(長編及び連作短編集部門)を受賞、後に映画化もされた柚月裕子さんの代表作のひとつ。広島県の架空の街「呉原市」を舞台にした、実話をベースにしたと言われるハードボイルド警察小説です。この「呉原市」が呉市をモデルにしていることは、地元では周知の話。呉のことが書かれた小説の、著者直筆サイン+落款印付き初版が、呉の古本屋の手元に集まってきた——そのめぐり合わせに、少しだけ静かな気持ちになりました。
サイン本・落款印付きの本は、当店で積極的に評価している一分野。特に初版本にサインという組み合わせは、単なる中古書とはまったく別の一冊として扱われます。今回の本も、しっかりと評価させていただきました。
呉ロケ作品のこと——実はアッシュ書店の近くも撮影地なんです
今回の500冊のなかには、『孤狼の血』のほかにも、呉ゆかりの本が入っていました——こうの史代『この世界の片隅に』の文庫版が、文庫の山にさらっと混ざっていたのです。こちらは呉の昭和を描いた漫画作品としてすでに全国的に読まれている一冊。『孤狼の血』(呉原市のハードボイルド)、『この世界の片隅に』(呉の昭和)——それに、映画『海猿』も、呉が舞台としてよく知られている作品のひとつです。
そして、実はここだけの話でもないのですが——アッシュ書店の事務所の近くも、映画『孤狼の血』の撮影地だったのです。今日お預かりしたご蔵書のなかに柚月裕子『孤狼の血』の著者直筆サイン本があって、そのご本が呉の古本屋の手元に届いた、その古本屋の事務所の近くが、実は同じ『孤狼の血』の映画ロケ地——という、少し不思議な巡り合わせが今日は重なりました。
もう一本の呉ロケ作品、映画『海猿』のロケ地としてよく知られているのは、川原石駅の山側にある「両城の200階段」。呉らしい坂の街の風景がぎゅっと詰まった場所で、呉市内では有名なランドマークのひとつです。呉が舞台の作品の本を、呉の古本屋がお預かりして、また次の呉ゆかりの読者へお繋ぎしていく——そういう地元の本の流れが、当店にはたしかに一本、流れています。
本日お買取させていただいた蔵書(広島市南区・引越し整理)
・文庫 約250冊(講談社学術文庫/ちくま文庫/ちくま学芸文庫/岩波文庫)
山田風太郎・養老孟司・内田百閒・吉本隆明・都築響一・長井勝一『「ガロ」編集長』
ニーチェ全集(上下)・丸山眞男セレクション
柳宗悦『手仕事の日本』・幸田露伴『五重塔』・松尾芭蕉・志賀直哉ほか
金谷治『孔子』・養老孟司『形を読む』・朝永振一郎・高島俊男・ドナルド・キーンほか
こうの史代『この世界の片隅に』文庫 ほか
・単行本・ムック本 約250冊
小池龍之介・池谷裕二・池内紀・鶴見俊輔+黒川創『鶴見俊輔伝』
半藤一利・出口治明・山田無文『十字図』
太田猛彦『森林飽和』(NHKブックス)・磯田道史・上野千鶴子
カルロ・ロヴェッリ『時間は存在しない』・盛永審一郎
柚月裕子『孤狼の血』(KADOKAWA・2015年初版・著者直筆サイン+落款印)★
= 合計 約500冊
すべての査定と積み込みが完了するまで、およそ1時間ほど。文庫と単行本を交互にオリコンへ入れて、リビングから玄関、そしてハイエースまで、往復を重ねます。クーラー全開のリビングから外へ出ると、猛暑日の熱気がまとわりつく——この往復を何度か繰り返し、無事に積み込みまで完了しました。ご依頼者様には、査定内容もご確認いただき、その場でお会計。お礼を申し上げて、お宅を後にしました。
おわりに——引越しという節目に、書棚の輪郭が見えてくる
引越し整理の買取は、実家整理や遺品整理とは、少し性格が違います。ご依頼者様ご自身が、これからも同じ本と暮らしていくのか、いかないのかを、その場で決めていく——そういう時間です。一軒家の書棚をマンションのスケールに合わせて絞り込むということは、「これまでの自分」と「これからの自分」の境界線を、蔵書のうえで引き直すということでもあります。
今回のお宅の500冊は、学術系文庫を軸に、思想・哲学・文学・民俗・科学・歴史・小説を横断してこられた読書の輪郭を、はっきり残していました。そのなかから、これから先の暮らしのなかで手元に残す本と、次の読者へ委ねる本とを、ご依頼者様が選び分けていかれた——その選び分けの結果として、当店に約500冊がやって来た、ということになります。
お預かりしたご蔵書は、店主が一冊ずつ丁寧に整理させていただいて、講談社学術文庫や岩波文庫、ちくま文庫の名著を必要としている次の読者へ、柚月裕子さんやこうの史代さんの作品を大切にしてくださる次の読者へ、責任を持ってお繋ぎしてまいります。本日はご縁をいただき、ありがとうございました。
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サイン本・落款印付きの本、お持ちではありませんか?
著者直筆サイン本・落款印付きの本は、当店で買取大歓迎です。柚月裕子さんに限らず、人気作家・受賞作家の初版本にサインが入っているものは、通常の中古書とは別の評価をさせていただきます。ご実家や書棚に「そういえばサイン本があったな」というご記憶があれば、ぜひご相談ください。また、講談社学術文庫・ちくま文庫・岩波文庫の学術系文庫が大量にお手元にある場合も、まとめてお声がけいただければ、しっかりと拝見いたします。
まとめ|猛暑日の500冊と、呉ゆかりの本たち
本日2026年7月21日の広島市南区 引越し整理買取は、講談社学術文庫・ちくま文庫・岩波文庫・ちくま学芸文庫を中心とした文庫250冊、単行本・ムック本250冊——あわせて約500冊のご蔵書をお譲りいただきました。主役級は柚月裕子『孤狼の血』(KADOKAWA・2015年初版)著者直筆サイン+落款印付きの一冊、そしてこうの史代『この世界の片隅に』文庫もその中に含まれています。
呉の事務所を昼過ぎに出て、熊野道路の山越えから海田大橋を渡って広島市南区へ、猛暑日の中を約1時間弱。クーラー全開のリビングで500冊と向き合い、約1時間ほどで積み込み完了——一軒家からマンションへ、暮らしのスケールを変えていかれるご依頼者様の書棚の、その一区切りに立ち会わせていただいた1日でした。
「引越しに合わせて蔵書を整理したい」「サイン本や初版本が混ざっている」「学術系文庫や単行本がまとまってある」——そんなお悩みのお客様、ぜひ当店にお声がけください。広島市南区・広島市全域・呉市・広島県全域、出張費・査定費すべて無料で対応しております。まずは0120-273-707までお気軽にお電話ください。