2026年9月11日。広島市安佐北区へお伺いしました。実家の遺品整理に伴うご依頼です。

初めてのお客様でした。今回はAIで探して、お電話をくださった——数年前には無かった見つかり方です。

お譲りいただいたのは図録と大型画集が中心で、ハイエースの荷室がいっぱいになるくらいの量でした。その場で1点ずつ査定して、金額にご納得いただいてから積み込み、お支払いまで完了しております。当店はこの進め方が基本です。

古本屋さんもけっこう体力仕事だねー

お宅にお伺いして、まず分かったことがあります。駐車場から家まで、少し距離がありました

こちらは台車を出しました。するとお客様が一輪車を出してきて、運搬を手伝ってくださったのです。図録と大型画集ですから、1冊が重い。何往復かしたところで、お客様がこうおっしゃいました。

古本屋さんもけっこう体力仕事だねー

そのとおりです。正直にお答えしました。

古本屋を始める前は、店に座ってお客さんと話して、好きな本を読んで——そんなふうに簡単に考えていました。実際は体力仕事がほとんどです。

本は紙です。紙は重い。とくに図録や大型画集は、厚い紙を使って、大きい判型で、函に入っている——3つとも重くなる条件です。今回のようにまとまった量になれば、それを積んで、運んで、また積む。当店の仕事は、査定より前にまず運ぶことから始まります。

それでも、この日はありがたい一日でした。お客様が一輪車を出して、一緒に運んでくださったからです。頼んだわけではありません。ご自分から出してきてくださいました

車が横付けできないお宅でも、お伺いします

ここは書いておきたいところです。

「家の前まで車が入らないから、来てもらえないんじゃないか」——そう思って連絡をためらわれる方がいらっしゃいます。

それは理由になりません。当店は台車を積んで走っております。呉市で坂の下のお宅から段ボール8箱を運び出したときは、行きは空の台車で坂を下り、帰りは本を積んで坂を上る、という往復を繰り返しました。今回は平坦でしたが距離がありました。

お申し込みのときに「駐車場から少し歩きます」とだけお伝えいただければ十分です。それで準備をしてお伺いします。

日本陶磁大系 全28巻揃(平凡社)

書棚に並んだ平凡社『日本陶磁大系』全28巻の背表紙。青緑色を基調とした背に巻数の数字と「縄文」「弥生」「埴輪」「須恵」「備前」「志野 黄瀬戸 瀬戸黒」「唐津」「萩 出雲」「伊万里」「柿右衛門」「鍋島」「九谷」「仁清」「乾山」「京焼」「民窯」「近代日本の陶磁」などの巻名が並び、下部に「オールカラー版」「平凡社」の帯、3巻の帯に「全28巻完結」の表示が見える
平凡社『日本陶磁大系』全28巻。並び順はばらばらですが、1巻から28巻まで欠けておりません撮影:アッシュ書店店主/2026年9月11日・お客様宅

書棚を拝見して、すぐ目に入ったのがこれでした。平凡社『日本陶磁大系』オールカラー版、全28巻揃いです。

背の並び順はばらばらでした。21、17、18、10、11……と数字が飛んでいます。ただ1巻から28巻まで、欠けている番号はありませんでした。3巻の帯に「全28巻完結」と入っています。

巻の立て方が、このシリーズのいいところです。

1 縄文/2 弥生/3 埴輪/4 須恵
5 三彩 緑釉 灰釉/6 古瀬戸/7 常滑 渥美 越前 珠洲
8 信楽 伊賀/9 丹波/10 備前/11 志野 黄瀬戸 瀬戸黒
12 織部/13 唐津/14 萩 出雲/15 上野 高取 八代 小代
16 薩摩/17 長次郎 楽代々/18 光悦 道入 玉水 大樋
19 伊万里/20 柿右衛門/21 鍋島/22 九谷
23 仁清/24 乾山/25 万古/26 京焼
27 民窯/28 近代日本の陶磁

縄文から始まって、近代で終わる。途中は産地ごと、人ごとに分かれています。備前、信楽、唐津、萩——焼き物の名前として聞いたことのある土地が、それぞれ1巻ずつ立っている。そして長次郎、光悦、仁清、乾山といった人の名前の巻もある。

揃っていることの意味を、このシリーズはよく表していると思います。28巻のうち1巻でも欠ければ、全巻揃いを探しておられる方の候補から外れます。備前の巻が抜けていたら、備前を見たい人には届かない。

逆に言えば、揃っているということが、それだけで価値になります先日お譲りいただいた東洋医学の蔵書では巻が飛んだ端本もありましたが、あちらはあちらでその巻を探している方に向かいます。どちらも行き先はあります。ただし評価は変わります。そこは隠しません。

小磯良平の画集と図録が、まとまってありました

書棚に並んだ小磯良平関連の画集と図録の背表紙。神戸市立小磯記念美術館の『L'ŒUVRE GRAVÉ DE R. KOISO』『小磯良平回顧展』『作品選 KOISO RYOHEI』、求龍堂『小磯良平画集』、『国立トレチャコフ美術館展 忘れえぬロシア』、ひろしま美術館『上村松園展』、中央公論社『マネとドガ』、『初代徳田八十吉翁作品集』、川合玉堂名画集『想い出の里』などが並ぶ
小磯良平の画集と図録。神戸市立小磯記念美術館のものが複数ございました撮影:アッシュ書店店主/2026年9月11日・お客様宅

もうひとつ、はっきりした集まりがありました。小磯良平です。

求龍堂の『小磯良平画集』、『小磯良平油彩作品集』(函入り)、『小磯良平素描作品集』、『小磯良平ブックワーク』、『現代日本素描全集 小磯良平』。そして神戸市立小磯記念美術館の図録が複数——『L'ŒUVRE GRAVÉ DE R. KOISO』、『小磯良平回顧展』、『作品選』。ほかに『小磯良平展 大野コレクション』、ひろしま美術館所蔵の小磯良平展の図録。

画集と図録の両方があるのが、この並びの特徴です。画集は作品を手元で見るための本。図録は実際に展覧会へ行った記録です。

図録について、ひとつお伝えしておきたいことがあります。美術展の図録は、書店にはほとんど並びません。会場の売り場で買うものです。会期が終われば、原則として新たに手に入る場所がなくなる。だから後から探す方は、古書に頼ることになります

同じ棚には、『国立トレチャコフ美術館展 忘れえぬロシア』、ひろしま美術館上村松園展』、中央公論社『マネとドガ』(世界の名画5)、『初代徳田八十吉翁作品集』、川合玉堂名画集『想い出の里』も並んでおりました。

函に入った大型本が、7冊並んでおりました

書棚に並んだ函入りの大型美術書の背表紙。左から『京都 古寺逍遥』日本放送出版協会、『故宮の至宝 台北故宮博物院 北京故宮博物院』平凡社、加藤正俊編著『円相 禅の究極』毎日新聞社、『肉筆 葛飾北斎』、講談社『徳田八十吉作品集 耀彩』、古田紹欽編著『遺偈の書』毎日新聞社、NHK出版『敦煌 THE ART OF DUNHUANG』が並び、すべて厚紙の函に入っている
左から京都、故宮、円相、北斎、徳田八十吉、遺偈の書、敦煌。この7冊はすべて函入りでした撮影:アッシュ書店店主/2026年9月11日・お客様宅

この棚は、並んでいる7冊すべてが函入りでした。

京都 古寺逍遥』(日本放送出版協会)、『故宮の至宝』台北故宮博物院・北京故宮博物院(平凡社)、加藤正俊 編著『円相 禅の究極』(毎日新聞社)、『肉筆 葛飾北斎』、『徳田八十吉作品集 耀彩』(講談社)、古田紹欽 編著『遺偈の書』(毎日新聞社)、『敦煌 THE ART OF DUNHUANG』(NHK出版)。

函入りの本は、函の状態に扱われ方が出ます。今回のものは、函の角が潰れておらず、棚にきちんと立っていました。

なお函にヤケやシミがあっても、それだけで対象外になることはありません。函は本体を守るためのものですから、函が日に焼けている分、中身が守られているということでもあります。判断が分かれるのは中身の側——本文の書き込み、水濡れ、カビです。本の保管と劣化については別の記事にまとめております。

美術だけではありませんでした

ここまで書くと美術一色のようですが、実際は違いました。

棚にはゴッホ展、セザンヌ、レオナルド・ダ・ヴィンチ(世界の名画・小学館/TASCHEN)といった西洋絵画の画集があり、そのとなりに『ニッコール年鑑』が2冊——1996-97年版と2000-2001年版。写真の年鑑です。さらに田河水泡『のらくろ漫画大全』(講談社)、『別冊一億人の昭和史 日本ニュース映画史』(毎日新聞社)。荷室に積んでいくと、料理や家庭菜園の実用書や『サザエさん』も出てきました。

美術の棚と、暮らしの本が、同じお宅にありました。遺品整理でお伺いすると、こういうことはよくあります。ひとつの分野で塗りつぶされた本棚のほうが、むしろ珍しい。

当店は分野を選んで持ち帰ることはいたしません。図録も画集も実用書も漫画も、まとめて拝見します。分類はしていただかなくて結構です。

お茶とお菓子をいただきました

積み込みが終わったあと、お客様からペットボトルのお茶とお菓子をいただきました。

何往復もしたあとです。水分と糖分を補給して、次の買取へ向かいました。

正直に申し上げると、こういうお気遣いをいただくたびに、恐縮すると同時にありがたいと思います。とくに今回は、一輪車を出して一緒に運んでくださったうえでのことでした。

よくあるご質問

家の前まで車が入りません。駐車場から距離があっても来てもらえますか?

お伺いします。今回も駐車場からお宅まで距離があり、台車で何往復もしました。呉市では坂の下のお宅から坂を上って運んだこともあります。車が横付けできないことを理由にお断りすることはありません。お申し込みのときに「駐車場から少し歩きます」とだけお伝えいただければ、準備してお伺いします。

図録や大型の画集も買取してもらえますか?

お任せください。美術展の図録は書店で流通しないものが多く、会期が終われば新たに手に入る場所がなくなります。だから後から探す方は古書に頼ることになります。厚くて重いので運び出しは大変ですが、そこは当店の仕事です。

その場で査定して、すぐにお支払いしてもらえますか?

それが当店の基本の進め方です。お伺いして1点ずつ拝見し、金額をお出しして、ご納得いただいてから積み込み、お支払いまで済ませます。今回の広島市安佐北区のご依頼もこの形でした。金額にご納得いただけなければ、お断りいただいて構いません。その場合もキャンセル費はいただきません。なおお客様のほうから「持ち帰って査定してほしい」とご希望をいただいた場合は、そのようにすることもできます。

全集は揃っていないと買取してもらえませんか?

端本もお引き受けします。ただし揃っていれば評価が変わることは隠しません。今回の『日本陶磁大系』は全28巻揃いでした。1巻でも欠ければ全巻揃いを探している方の候補から外れますが、端本の場合はそのシリーズの特定の巻を探している方に向かいます。

まとめ

広島市安佐北区で、実家の遺品整理に伴うご依頼をいただきました。図録と大型画集を中心に、ハイエースの荷室がいっぱいになるくらいお譲りいただき、その場で査定・お支払いまで完了しております。

平凡社『日本陶磁大系』全28巻揃小磯良平の画集と図録、函に入った大型本——そしてゴッホもセザンヌも、写真年鑑も、のらくろも、サザエさんも

駐車場から距離があり、台車で何往復もしました。お客様が一輪車を出して手伝ってくださったこと、そして終わってからのお茶とお菓子——ありがとうございました。

広島市安佐北区は当店の対応エリアです。図録や画集が大量にあって、自分では動かせない——そうしたご事情こそ、お聞かせください。呼んでいただくだけなら費用は発生しません。

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