2026年6月19日。朝、広島は曇り空でした。本日は広島県福山市のお客様のお宅へ、出張買取でお伺いします。広島市内を抜け、東広島呉道路から国道2号線に乗り継いで、瀬戸内の景色を眺めながら東へ走ること約2時間。梅雨の合間の、湿度はあるけれど雨は降っていない——出張買取にはちょうど良い天気だな、と思いながらハンドルを握っていました。
本日お譲りいただいたのは、邦楽・洋楽・ジャズ・ソウルにまたがるLPレコード25枚、真言宗の僧侶中村公隆師の密教関連書(春秋社)約11冊、そして白洲正子・備前焼・長谷川等伯など、陶芸・美術関連の書籍。お伺いしてみると本は書棚に入っているのではなく、畳の上に平置きで並べてくださっていて——そこから一冊ずつ、一枚ずつ拝見しながら選別する形での査定となりました。事前にお写真をお送りいただいていたこと、そして「買取できないものもご希望どおりお引き取り」させていただいたこと——印象に残る、夏日の福山の現場でした。
この記事でわかること
・広島県福山市の出張買取現場の実例(2026年6月19日)
・LPレコードの古書市場での評価(邦楽シティポップ/フュージョン/ジャズ/フィラデルフィア・ソウル/AOR/スタンダード)
・中村公隆師(春秋社)の密教書がシリーズでまとまっていた価値
・白洲正子・備前焼・長谷川等伯——陶芸・美術書のラインナップ
・事前のお写真送付がもたらす査定スピードと精度
・畳の上に平置きされた蔵書からの選別という査定スタイル
・買取対象外の品もご希望どおりお引き取りした、当店のお取引方針
東広島呉道路から国道2号線——曇天の朝、福山へ2時間の道のり
当店は呉店を拠点にしており、福山市方面への出張買取は、いつものルートが決まっています。呉から東広島呉道路で東広島へ抜け、そこから国道2号線で東へ——三原、尾道と海沿いを走り、福山に到着するまでがおおよそ2時間。何度通っても瀬戸内の島々の景色は飽きず、現場に向かう前のちょっとした気分の切り替えになります。
本日の朝は曇り空でした。広島県沿岸部の6月は、梅雨と初夏のはざまで天候が読みにくい時期ですが、車を走らせている分には「むしろ陽射しがないほうが楽だな」くらいの感覚。エアコンも控えめでよく、運転に集中できます。三原を抜け、尾道大橋を右手に眺めて、しまなみ街道の入口を通り過ぎ、福山市の市境に入った——そのとき、ふと車のメーターに目をやると、外気温計が「32℃」を表示していて、思わず二度見してしまいました。
陽射しが出ていないので体感ではそれほど暑く感じないのですが、「6月の中旬で、もう32℃か」と。年々前倒しになっていく夏の気配を、デジタル表示の数字越しに肌で感じた瞬間でした。古本屋を20年やっていますと、毎年こうした気候の小さな変化に敏感になります。蔵書の保管状態にも気温・湿度は直に影響しますし、お客様のお宅でも年々「本のコンディションがここ10年で変わってきている」と感じる場面が増えてきました。
現場到着——畳の上に、本とレコードが平置きで並んでいた
お約束のお時間に、福山市内のお宅に到着。ご挨拶を済ませてお部屋にお通しいただくと、目に飛び込んできたのは——畳の上に、本とレコードが平置きで並んでいる光景でした。
書棚に詰め込まれた状態ではなく、お客様があらかじめ書棚から取り出して、畳の上にきれいに並べておいてくださっていたのです。LPレコードはレコードで、密教書は密教書で、陶芸関連書はそのジャンルで——ジャンルごとに、ある程度のまとまりで畳の上に展開されていました。古本屋の現場ではいろいろなお宅の光景に出会いますが、「畳の上の平置き」というのは、査定する側にとって実はとても見やすい状態です。
表紙が上を向いていて装丁と書名が一度に目に入る、ジャンルが事前に整理されている、手に取って中身を確認するのに障害物がない——書棚に詰まった状態から一冊ずつ抜き出して背表紙を読む手間がなく、「眺めて、手に取って、戻す」というシンプルな所作で査定を進められます。お客様の「準備の手間」が、そのまま当店の査定の精度とスピードに変わる場面です。
💡 事前のご準備、本当に助かります
畳の上・テーブルの上・床に並べておいてくださる、書棚のジャンルごとにまとめてくださる、紐で縛らずに一冊ずつ手に取れる状態にしておいてくださる——こうしたほんの少しのご準備が、査定の精度を高めます。もちろん「ご準備が難しい」「書棚から出すのが大変」というお宅でも、当店の店主が現場でひとつずつ確認しながら進めますので、ご心配は要りません。お客様のお手間がかからない方法で、いつでもご相談ください。
事前のお写真確認——現場で「答え合わせ」のように進む査定
本日のお宅では、もうひとつ大きなアドバンテージがありました。事前にお客様がスマホで撮影されたお写真を、メールで何枚かお送りくださっていたのです。LPレコードのジャケット、密教書の背表紙、陶芸書の表紙——それぞれを別々のショットで撮ってくださっており、お問い合わせの段階で当店の店主はかなり具体的なイメージを持って本日のお伺いに臨んでいました。
その結果、現場での査定は「初めて見て驚く」のではなく「事前情報の答え合わせをする」ような流れに。あらかじめ「これは確実に買取できる」「これは状態を見てから判断」「これは難しいかもしれない」と頭の中で分類できていたため、畳の上に並べられた品々を順に拝見しながら、お客様にも「この一山はこういう理由でしっかりお値段を付けられます」「こちらは状態を見ると…」と、テンポよくご説明することができました。
お写真の送付は、お客様にとっても当店にとっても、本当に良いことしかありません。当日の所要時間が短くなる、査定の根拠を共有しやすい、準備すべき梱包資材の量を読める——お問い合わせの段階で「写真を送ってもいいですか?」とお声がけくださるお客様は、毎度心の中で手を合わせて感謝しております。
蔵書との対面——本日お預かりした主な品々
では、本日お買取させていただいた品々を、畳の上に並んでいた順にご紹介します。
① LPレコード25枚——邦楽・洋楽・ジャズ・ソウル横断の選盤 ★メイン
まず本日の主役は、畳の上に並んだLPレコード25枚。枚数こそ多くはありませんが、邦楽・洋楽・ジャズ・ソウルと、ジャンルを横断しながらも一本筋の通った、明らかに音楽を愛してこられた方の選盤でした。枚数より「中身の濃さ」で印象に残るコレクションです。
邦楽:山下達郎・高中正義・上田正樹——日本のポップス/ソウル黄金期
- 山下達郎『RIDE ON TIME』(1980年)——海外で「シティポップ」再評価の中心人物として注目を集める達郎の代表作のひとつ。タイトル曲はマクセルのCMで一世を風靡、いまや日本ポップス史の金字塔といえる一枚。オリジナル盤の状態の良いものは海外リスナーからも高い需要があります。
- 高中正義『alone』(帯付・Xmasプレゼント仕様)——日本のフュージョン/ギター・インストの草分け、高中正義のソロ作。帯に「Xmasプレゼント フィルムレコード付」「BRAND NEW! 全曲ニュー・オリジナル」の表記、レーベルはWHITE LAGOON。当時の販促が残ったままの状態は、コレクター視点でも嬉しいポイントです。
- 上田正樹『JEALOUS NIGHT 〜夜を抱きしめて〜』——サウス・トゥ・サウスの「悲しい色やね」で知られる関西ソウルの第一人者・上田正樹の作品。和製ソウル/R&B史を語るうえで欠かせない歌い手です。日本のシンガーが英語圏のソウル・ミュージックの語法を自分のものにしていった、80年代の重要な一枚。
洋楽AOR/ソウル/ポップス——ジャケットが語る70〜80年代
- Pablo Cruise(パブロ・クルーズ)——70年代後半〜80年代初頭のウエストコースト/AORの良質バンド。「Love Will Find a Way」「Whatcha Gonna Do?」など、爽快なメロディと洗練されたコーラスが魅力。AORファンには見逃せない一枚。
- Bobby McFerrin『チュニジアの夜』(Blue Note 帯付盤)——「Don't Worry, Be Happy」で有名なヴォーカル・パフォーマーですが、本盤はディジー・ガレスピーの名曲「Night in Tunisia」を題したジャズの傑作。Blue Noteからのリリース、日本盤の帯が付いたまま——ジャズ・ヴォーカル好きには嬉しい一枚です。
- The Chi-Lites(チャイ・ライツ)——「Have You Seen Her」「Oh Girl」で知られるシカゴ・ソウルの名グループ。本盤ジャケットには『MEAN…』の文字。
- Teddy Pendergrass『IT'S TIME FOR LOVE』——ハロルド・メルヴィン&ザ・ブルーノーツのリードボーカルから、ソロでも一時代を築いた"ミスター・フィリー・ソウル"。あの太く深い声を象徴するジャケットの一枚。
- Kenny Rogers(ケニー・ロジャース)——カントリーとポップスをまたぐ大物シンガー。「The Gambler」「Lady」など、世代を超えた名曲を多数残しています。
- ジョー・コッカー『COCKER』(日本盤・帯付・ECS-81742)——「You Are So Beautiful」「Up Where We Belong」のしゃがれ声が魅力のロック/ソウル・シンガー。日本盤の帯(ジョー・コッカー)まで残った美品で、コレクター価値があります。
ソウル/ジャズの傑作——O'Jays とコルトレーン『Blue Train』
- The O'Jays『LOVE FEVER』——「Love Train」「Back Stabbers」など、Philadelphia International Records 時代のフィラデルフィア・ソウルを代表するヴォーカル・グループ。本盤ジャケットの3人の笑顔が、グループの黄金期を物語ります。
- Hoagy Carmichael『Hoagy Sings Carmichael with the Paribale』——「Stardust」「Georgia on My Mind」の作曲家・ホーギー自身による弾き語り・ヴォーカル盤。「ジャズ・スタンダードの源流を、作曲家本人の声で聴く」という、音楽史的にも貴重な一枚。
- John Coltrane『BLUE TRAIN』(Blue Note 1577)——ジャズの一角の主役は何といってもこれ。コルトレーンが27歳のときに録音した、ジャズ・レコード史に残る名盤中の名盤。冒頭のあのうねるようなテーマを聴いたことのない方は、おそらく日本のジャズファンには一人もおられないでしょう。Blue Note 1577という型番だけで、ジャズ好きの心が動く一枚です。
古本屋として、選盤の「筋」を読む
LPレコードを拝見していると、その方が音楽とどう付き合ってこられたかが、選盤の組み合わせから伝わってきます。たった25枚の中に、邦楽のシティポップ/フュージョン/和製ソウルから始まって、AORの良質バンド、フィラデルフィアの黒人音楽、白人ポップス/カントリーの大御所、そしてジャズ・スタンダードの源流まで——ジャンルを越えて「歌のあるもの」「グルーヴのあるもの」に共通の感覚で耳を傾けてこられた、そんな選盤でした。盤面・ジャケットの状態もよく、帯まで残っているものが複数、保管環境に気を遣ってこられたことが分かる、ありがたい一山です。
② 中村公隆師の密教関連書(春秋社)約11冊
レコードの並びのお隣で、別のまとまりとして畳の上に並んでいたのが、高野山大阿闍梨・中村公隆(なかむら こうりゅう)師による密教関連の書籍、約11冊。版元はすべて春秋社で揃っており、シリーズで集めておられたことが一目で分かりました。
中村公隆師は、真言宗の僧侶・高野山大阿闍梨であり、修法・祈り・密教の智恵を現代人に向けて平易に説いてきた著述家でもあります。春秋社からはコンスタントに著作が刊行されており、宗教・思想の棚に置かれる定番の書き手。今回のお宅では、以下のような書名が確認できました。
- 『密教を生きる』
- 『大いなる〈いのち〉に目覚める』
- 『〈いのち〉の力——般若心経とともに』
- 『大日のごとく生きる』
- 『〈いのち〉の宝庫を開く』
- 『いのち耀いて生きる』
- 『〈いのち〉の波動』
- 『楽しく嬉しく生きる秘訣』
- 『私たちのいのち、仏さまのいのち』
- ほか同シリーズ、計約11冊
背表紙に「般若心経とともに」「いのちの曼荼羅」といった副題が並び、副題からも師の思想の中心が「いのち」という言葉にあることが、棚を見ただけで伝わってきます。
「シリーズでまとまっている」ことの古書としての価値
古本買取の現場で、同じ著者の本がシリーズでまとまって出てくるのは、それだけで価値が一段上がる場面です。一冊一冊バラで流通すると、買う側からすると「他の巻も探して揃えなければならない」手間がかかります。逆にシリーズでまとまっていれば、その「次の読者が抱える手間」を肩代わりできる状態で受け渡せる——だからしっかり評価できるのです。
とくに密教関連の書籍は、仏教大学・宗門系の研究機関・お寺さま・在家の聞法者という、明確な読者層を持つジャンルです。買取ジャンルのページでもご紹介しているとおり、当店はこの種の宗教書・思想書のお取り扱いに特に力を入れております。
③ 陶芸・焼物関連書籍——白洲正子・備前焼・長谷川等伯
そして畳の上の三つ目のまとまりが、陶芸・焼物・美術関連の書籍群でした。茶碗・備前焼・水墨画——焼物と日本美術の核心を押さえた、お客様の審美眼が伝わってくるラインナップです。
白洲正子・加藤唐九郎『やきもの談義』——焼物随筆の傑作
まず目を引いたのが、白洲正子・加藤唐九郎『やきもの談義』(風媒社)。「日本の美」を見据え続けた随筆家・白洲正子と、陶聖と謳われた陶芸家・加藤唐九郎——この二人の対談・随筆をまとめた一冊は、焼物の本としても、日本文化論としても、長く読み継がれている良書です。白洲正子の関連書籍は『かくれ里』『西行』『近江山河抄』『日本のたくみ』など、いまも安定した需要があります。
『日本の名陶十撰 茶碗Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ』毎日新聞社——揃いで残る価値
毎日新聞社の『日本の名陶十撰 茶碗』シリーズの第1巻〜第3巻が揃って並んでいました。「実像に迫る新鑑賞法/実作に役立つ実物大写真と実測図」を謳う、茶碗の図版・実測図の決定版。茶道の世界、骨董の世界、いずれの読者にも喜ばれる揃いです。さらに世界文化社の『愛蔵版 名碗大図鑑』も並んでおり、茶碗本のコーナーだけで一段の充実ぶり。
備前焼・粉引・焼締め——実用書/技法書も多数
- 山本雄一『備前焼の技法——伝統と創造』(誠文堂新光社)——備前焼の第一線の作家による技法書。
- 『灯油・ガス窯を使った焼締焼成の裏ワザ』(阿部出版)——現代的な窯での焼締めに関する実践書。
- 『はじめて作る粉引の器』(双葉社)——粉引の入門〜中級向けの技法書。
- 雑誌『つくるたのしさ』第3号「釉の基本は灰と鉄」、第6号「土を知る」——陶芸専門誌のバックナンバー。
備前焼は岡山県備前市を中心とする、釉薬を使わない焼き締めの陶器。日本六古窯のひとつで、広島のお隣の焼物ですから、瀬戸内地域の蔵書には比較的よく出てくるジャンルです。
『没後400年 長谷川等伯』2010年図録——美術館図録の至宝
そして陶芸書の山の隅に、ひときわ立派な装丁の『没後400年 長谷川等伯』(2010年)が混ざっていました。これは東京国立博物館・京都国立博物館で開催された没後400年の大回顧展の図録。長谷川等伯は安土桃山時代の絵師で、代表作『松林図屏風』(国宝・東京国立博物館蔵)は日本水墨画の至宝として知られる作品です。展覧会会期中にしか販売されない図録は、終了後は古書市場でしか入手できなくなるため、状態の良いものは安定した需要があります。
「本物」「一級品」を選び抜いてきた審美眼
LPレコードと宗教書、そして陶芸・美術書——一見バラバラのジャンルに見える畳の上の三つの山ですが、よくよく拝見すると共通する一本の筋が見えてきます。それは、「本物」「一級品」を見極めて選び抜いてきたという、お客様の長年の趣味・教養の積み重ね。コルトレーン『Blue Train』、中村公隆師の春秋社シリーズ、白洲正子の随筆、長谷川等伯の画集——どれも「その分野の核」に位置する書き手・作品ばかりです。
こうした蔵書をお預かりするとき、古本屋として背筋が伸びる思いがします。お預かりした以上は、同じく「本物」を求めている次の読者のもとへ、きちんと届けていくのが当店の責任です。
査定と仕分け——「買取できるもの」と「買取が難しいもの」を分ける
畳の上に並んだ品々を、一つひとつ手に取りながら査定を進めていきました。LPレコードは盤面とジャケットの状態を一枚ずつ確認、密教書はシリーズの揃い具合と保管状態、陶芸書は刊行年と図録の状態——それぞれに違う観点で見ていきます。
事前のお写真で大まかな像はつかめていましたが、現物を拝見すると、どうしても市場価値が付きにくい品が一部含まれていました。レコードであれば盤面のキズが深いもの、書籍であれば日焼け・シミが強く出ているもの、ジャンル的に当店ではご紹介先の薄いもの——理由はさまざまですが、正直にお伝えする必要があります。
「これは買取可能です」「こちらはお値段を付けるのが難しいです」——お客様には、一つひとつ理由をお伝えしながら、ふた山に分けてご説明しました。査定で大事なのは、「いくらで買うか」を伝えることだけではなく、「なぜその金額なのか」をきちんと言葉にすることだと、店主は20年やっていてつくづく感じます。
買取不可の品も、ご希望どおりお引き取り
仕分けが終わった段階で、お客様にお伺いしました。「買取が難しい品については、いかがいたしましょう?」と。
お客様のお返事は、「できれば全部、一緒に持って行ってもらえると助かる」とのこと。買取対象外の品も含めて、まとめてお引き取りさせていただく形でお話がまとまりました。
当店では、こうした「買取と処分が一度で済んでほしい」というお客様のご事情に、できる限り柔軟に対応することを方針としております。今回も、買取対象の品はしっかり評価したうえでお値段をお付けし、買取対象外の品はお引き取りという形で、まとめて当店の車に積み込みさせていただきました。買取と引取、両方一度で完結する形でのご対応です。
💡 「買取と処分、両方お願いしたい」もOKです
遺品整理や蔵書整理のご相談では、「全部買い取れるわけではない」のが現実です。アッシュ書店では、買取対象外の本・レコード・CD・DVDについても、量や状況に応じてお引き取り対応をご相談いただけます。お問い合わせの段階で「買取できないものはどうなりますか?」と一言お聞かせいただけますと、当日までに段取りを整えてお伺いできますので、よりスムーズです。遺品整理の古本買取もあわせてご覧ください。
コラム①「畳の上に平置き」という査定環境の良さ
今回のお宅で特徴的だったのは、何度もお伝えしている「畳の上に平置きで並べてくださっていた」という査定環境です。古本屋の現場には、いろいろなお宅の光景があります。
- 書棚に詰まったままで、一冊ずつ抜き出して見るお宅
- 段ボール箱に積まれていて、箱を開けながら見るお宅
- 押入れの奥から少しずつ出していただきながら見るお宅
- そして今回のように、畳の上に平置きで並べてくださっているお宅
どのスタイルでも当店は対応しますが、畳の上の平置きは査定する側からすると、もっとも見やすい環境のひとつです。表紙とジャケットが一度に俯瞰でき、手に取る障害物がなく、ジャンルごとに事前に分けられていることが多い。お客様の「お伺いする側のことを考えてくださった準備」が、そのまま査定の精度と所要時間の短縮につながります。
もちろん、ご準備が大変であれば「書棚に入ったまま」でも構いません。ただ、もし時間と体力に余裕がおありでしたら、「ジャンルごとに少し分けて、平らな場所に並べておく」という方法は、お客様にとっても当店にとっても良い結果を生みます。
コラム②シティポップ世界再評価のいま——山下達郎・高中正義のレコード
本日のLPレコードの中で、店主が特に手に取って眺めたのが山下達郎と高中正義のオリジナル盤です。この10年ほどで、日本の1970〜80年代の都市音楽が「シティポップ」「Japanese AOR」として世界的に再評価されるという、出版・音楽業界にとって衝撃的な現象が起こりました。
YouTubeやSpotifyを通じて、海外のリスナーが当時の邦楽を発見し、レコードショップで日本盤のオリジナルを探す——いまや欧米・東アジアの音楽ファンの間で「Japanese City Pop」は確立されたジャンルです。竹内まりや「Plastic Love」が10年越しに世界中で再生され続けていることは、もはやポップ・ミュージックの逸話となりました。
山下達郎のオリジナル盤、高中正義のフュージョン作品——これらは「日本のリスナーにとっての懐かしさ」と「海外のリスナーにとっての新鮮さ」が同居する不思議な立ち位置にあります。古本屋・古レコード屋として、こうした流れの中で時代を経た盤を次の読者・リスナーへ繋いでいくのは、地味ながら意義のある仕事だと感じています。
コラム③中村公隆師の密教書——「祈り」と「修法」の言葉
もうひとつ、本日の蔵書で店主が手を止めて眺めたのが、中村公隆師の密教書の表紙群です。「修法」「祈り」「密教の智恵」——タイトルに並ぶ言葉は、現代の私たちが日常会話で使うことの少ない言葉ばかり。けれど、ページを開くと、決して難解な専門用語の羅列ではありません。
真言密教を含む日本仏教の現代的な著述には、「現代を生きる私たちに、伝統の言葉をどう手渡すか」という大きなテーマがあります。中村公隆師の春秋社からの一連の著作は、まさにその橋渡しの仕事。専門家にも、初学者にも、長年聞法を続けてこられた在家の方にも、それぞれに届く語り口で書かれています。
古本屋の店主としては、こうした「読者層の広さを持った宗教書」を扱うとき、特に責任を感じます。次に手に取る方が、お寺の若い僧侶かもしれない、仏教を学び始めた学生かもしれない、人生の節目を迎えた在家の方かもしれない——どなたであっても、その方の「いま、この本に出会えてよかった」に繋がるよう、丁寧に次へ繋ぐ。それが古書店の仕事の核だと、店主は思っています。
搬出——畳の上から、車のオリコンへ
査定が整い、都合で一つひとつにお値段をご提示し、お客様にご了承をいただいたところで、その場で古物商買取伝票に所定事項をご記入いただき、現金でお支払いを済ませて取引完了となりました。ここまでが、出張買取の「取引」の部分。このあとは、お宅から車まで「品物をお預かりして出る」という搬出作業です。
畳の上に平置きされていた品々を、買取分と引取分に分けて、持参していたオリコン(折りたたみコンテナ)に積み替えて玄関へ。お宅から車までは少し距離があり、ひとりで何復もさせていただくつもりでしたが、お客様が「手伝いますよ」とオリコンを一緒に運んでくださり、本当に助かりました。出張買取の現場でこうしたお気遣いをいただくと、ひとことお礼を申し上げて、ありがたく受けさせていただきます。
LPレコード25枚は想像以上にずっしりとした重量があります。レコード一枚あたり約200g前後、ジャケットも含めると25枚で5kg前後——書籍と合わせると、ちょうど良い積込み量でした。お客様のお宅の床・畳・建具を傷めないよう、慎重に運び出すのは、出張買取で何より気を遣う部分です。
トランクに収まったところで作業完了。お客様にあらためてお礼を申し上げ、お暇する流れです。
結び——曇り空に32℃、それでも気持ちのよい福山の現場
すべての作業を終え、来た道を逆にたどって呉店へ戻ります。行きと同じく曇り空の国道2号線、瀬戸内の島々を右手に眺めながら西へ。途中、車のメーター表示の外気温は変わらず30℃台のままでしたが、不思議と心地よい疲れの中で、ハンドルを握る手も軽く感じました。
本日お預かりした蔵書とレコードは、これから店主が一枚ずつ・一冊ずつ、改めて状態と内容を確認したうえで、しかるべき次の読者・リスナーへお繋ぎしていきます。コルトレーン『Blue Train』はあのジャケットを愛するジャズ好きのもとへ、中村公隆師の密教書は次の聞法者・研究者のもとへ、白洲正子の随筆や長谷川等伯の画集は、日本の美に向き合おうとする次の読者のもとへ——一つひとつ、責任を持って受け渡してまいります。
そして、買取対象外として一緒にお引き取りした品々も、当店で適切に処分・リサイクルさせていただきます。お客様のお宅から「持ち出すべきものを、一度ですべて持ち出す」——出張買取の現場でいちばん大切にしているのは、結局のところそのシンプルな一点です。
古本屋を20年やっていて、福山市は当店にとって特別なエリアのひとつ。瀬戸内の東の玄関、岡山との境にある文化の濃い街です。本日のお宅のように、音楽と宗教と美術が静かに共存する蔵書に出会えると、片道2時間の道のりも、まったく苦になりません。お時間をくださったお客様に、心からお礼を申し上げます。
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まとめ|LP・密教書・陶芸書——音楽と祈りと美の出会った夏日
本日2026年6月19日の広島県福山市の出張買取は、山下達郎・高中正義・ジョン・コルトレーン『Blue Train』・テディ・ペンダーグラスなどのLPレコード、中村公隆師(春秋社)の密教関連書約11冊、白洲正子・備前焼・長谷川等伯など陶芸・美術書——畳の上に平置きされた蔵書から、一つひとつ選別してお譲りいただきました。事前のお写真送付による精度の高い査定、買取対象外の品もご希望どおりお引き取り——お客様のご事情に寄り添った、気持ちの良いお取引でした。
「LPレコードを処分したい」「父の蔵書に仏教書・密教書がまとまっている」「陶芸・美術書を譲りたい」「遺品整理で本とレコードが一緒に出てきた」——そんなお悩みのお客様、ぜひ当店にお声がけください。広島県福山市・尾道市・三原市・広島県全域、出張費・査定費すべて無料で対応しております。事前にスマホで撮ったお写真をメールでお送りいただけますと、より正確な事前査定とスムーズなお伺いが可能です。まずは0120-273-707までお気軽にお電話ください。