2026年5月18日、本日は広島県尾道市因島町のお宅へお伺いしてきました。ご依頼主は県外在住の高齢の女性。因島町にあるご実家のお母様の蔵書——文学全集や古い百科事典など、約200冊の整理についてのご相談でした。

結論からお伝えします。本日、買取金額をお付けすることはできませんでした。市場価値の観点から、当店でも商品としてお取り扱いが難しい蔵書だったためです。それでも、お客様の「ただ処分するのではなく、一度プロの目で見てほしい」というお気持ちに寄り添い、特別に無料での引取をお引き受けしました。

本記事は、買取実績の報告であると同時に、「買取できない本もある」「無料引取はあくまで特別な対応である」という古書店としての正直なお話も併せてお伝えする内容です。同じようなご事情でお悩みの方の参考になれば幸いです。

この記事でわかること
・広島県尾道市因島町での引取実績(2026年5月18日)
・県外在住の高齢女性からのご依頼(お母様の蔵書整理)
・文学全集・古い百科事典など約200冊
・買取は叶わず、特別対応として無料引取でお引き受け
・「買取できない本」の傾向と理由
無料引取は特別対応であり、すべてのご依頼にお応えできるものではないこと
・他店で断られた本のご相談先として、当店の考え方

最初に大切なお願い

本記事は「買取できない本でも必ず無料で引き取ります」というお約束ではございません。当店は古書店であり、不要書籍の処分業者ではありません。無料引取は買取品とのバランスやお客様のご事情を踏まえた個別判断の特別対応です。すべての蔵書が買取対象外で、かつ大量の処分のみのご依頼の場合は、お引き受けできない場合がございますので、あらかじめご了承ください。

第1章:県外からのSOS——「地元の古本店に断られて」

本日のお客様は、県外にお住まいの高齢の女性。お電話を頂戴したのは数日前のことでした。

ご事情を伺うと——

  • お母様が住まわれていた因島町のご実家を整理している
  • 多くの蔵書が残っており、その整理に困っている
  • お住まいの近くの古本店にも相談したが、「内容的に買取できない」「遠方で対応できない」と断られた
  • 距離の問題で、ご自身で何度も因島へ通うのも難しい
  • でも「お母様から買ってもらった本もあり、ただ捨てるのは忍びない」
  • 「一度、プロの古書店に見てもらってダメなら、すっきり決断できる」

このようなお気持ちをお話しいただきました。本の内容を伺った時点で、率直に申し上げて当店でも買取は難しいだろうと予想していました。それでも、「お母様の思い出が詰まった本を、ただゴミとして処分してしまうことに、どうしても気持ちの整理がつかない」というお客様のお気持ちが、電話越しにも伝わってきました。

古書のプロに一度見てもらった、という事実が、お別れの区切りになる——そういうご依頼であれば、お伺いする意味があるのではないか。そう考えて、お引き受けすることにいたしました。

県外在住のお客様から、尾道市因島町のご実家へ 図1:県外からのご依頼——アッシュ書店が因島町へ 距離の問題で動きづらいご依頼者様に代わって、当店がご実家へお伺いする 瀬戸内海 県外在住のお客様 (高齢の女性) 「お母様の蔵書を  整理したい」 📞 お電話 アッシュ書店 (呉市・本店) 広島県古書籍商組合 監査・創業20年 🚗 出張 (しまなみ海道) 尾道市因島町 ご実家(本日の現場) 蔵書約200冊 お住まいの近くで断られたご依頼が、めぐりめぐって当店へ 「ご親族のお宅が広島県内」なら、ご依頼者様が県外にお住まいでも対応可能です (現地で立ち会っていただける方が必要となります)
図1:県外在住のご依頼者様と、広島県内のご実家——距離の壁を当店がカバーします。

第2章:尾道市因島町という土地——しまなみ海道と造船の島

因島(いんのしま)は、瀬戸内海の中心、広島県と愛媛県を結ぶしまなみ海道の中ほどに浮かぶ島です。広島県側から数えると、向島・因島・生口島と続き、その先は愛媛県に入って大三島・伯方島・大島・四国本土という島々の連なりになります。

かつては因島市として独立した自治体でしたが、平成18年(2006年)の市町村合併で尾道市に編入され、現在は尾道市因島町として、尾道市の一部となっています。

因島と言えば、村上水軍(因島村上家)の本拠地として中世に名を馳せた島。江戸期以降は造船業が発展し、日立造船・内海造船などの造船所が島の経済を支えてきました。また、八朔(はっさく)の発祥の地としても知られ、農業と造船と海運が複雑に絡み合った独特の文化を持つ土地です。

呉市の本店から因島町までは、しまなみ海道(西瀬戸自動車道)経由で車で約2時間程度。広島県内とはいえ、瀬戸内海をまたいだ離島であり、決して近い距離ではありません。お客様が地元の古本店から「遠方で対応できない」と言われたのも、この立地ゆえのお話だったのだと思います。

尾道市因島町の位置——しまなみ海道の中ほどに浮かぶ島 図2:尾道市因島町の位置——しまなみ海道の中ほど 広島県と愛媛県を結ぶ瀬戸内海の島々 瀬戸内海 広島県本土 呉市 尾道 向島 ★因島町 (本日の現場) 生口島 大三島 伯方 大島 愛媛県 しまなみ海道 呉市本店 → 尾道市因島町:車で約2時間 山陽自動車道・尾道道・しまなみ海道(西瀬戸自動車道)経由
図2:尾道市因島町は瀬戸内海・しまなみ海道のほぼ中央に位置。呉市本店からは車で約2時間の道のりです。

第3章:拝見した蔵書——文学全集・古い百科事典が中心

ご実家に到着し、現地で立ち会ってくださったご親族の方にお迎えいただきました。本棚の前に立つと——並んでいたのは、1970〜1990年代に多くのご家庭で見られた、いわゆる「家庭の教養書」と言える蔵書たちでした。

具体的な書籍構成(概数)

  • 世界文学全集・日本文学全集(複数の出版社)——約80冊
  • 古い百科事典(揃いの大型本)——約30冊
  • 歴史読み物・伝記シリーズ——約40冊
  • 料理書・実用書・趣味の本——約30冊
  • その他(雑誌・小説単行本など)——約20冊

どれもよく手入れされていて、状態は決して悪くありません。背表紙の日焼けも少なく、函(はこ)もきれいに残っているものが多くありました。「お母様が本当に大切にされていたのだな」というのが、本を一冊ずつ手に取って分かりました。

なぜ、状態が良くても買取が難しいのか

正直にお伝えします。文学全集と古い百科事典は、状態が良くても買取金額をお付けすることが、現在の市場では極めて困難です。理由は需要と供給のバランスに尽きます。

  • 1970〜1990年代の高度経済成長期・バブル期に、多くのご家庭で「教養の証」として購入された
  • 当時の発行部数が非常に多く、現在も中古市場に大量に流通している
  • 一方で、読者層が高齢化し、若い世代が紙の全集を購入する文化が薄れている
  • 大型本・揃い物のため、古本店の倉庫スペースを大きく占有する
  • 結果として、市場で1冊数十円〜数百円が相場、出品しても売れにくい

同じ「全集」「揃い物」でも、「日本思想大系」「カント全集」「アリストテレス全集」のような研究者向け・専門家向けのものは話が別で、当店でも揃いでしっかり評価できます。ただ、今回拝見した蔵書は、いずれも一般向けの教養全集——市場での評価が極めて厳しいラインナップだったのです。

詳しくは、別記事「古本屋が正直に語る『揃い物』の真実|文学全集・図録・百科事典はNG、哲学全集・思想大系はOK、その分かれ目とは」もご覧ください。

買取が難しい全集と、評価できる全集の違い 図3:揃い物でも「買取が難しい本」と「評価できる本」の違い 需要と供給のバランスが、買取の可否を分けています ❌ 買取が難しい全集・揃い物 ・世界文学全集(一般向け) ・日本文学全集(一般向け) ・平凡社世界大百科事典 ・ブリタニカ国際大百科事典 ・少年少女文学全集 ・大型図録(一般展覧会) 【理由】 大量に発行され、現在も中古市場に 過剰供給。読者層の高齢化も影響。 状態が良くても買取困難。 ○ 評価できる全集・揃い物 ・日本思想大系(岩波書店) ・日本古典文学大系 ・カント全集/アリストテレス全集 ・日本庭園史大系 ・個人全集(漱石・芥川など) ・専門書揃い(医学・建築等) 【理由】 研究者・専門家向けで、発行部数が 限定的。揃い物としての需要が 継続的にあり、評価可能。 ※ 個別の状態・市場動向によって異なります。詳しくはお電話でご相談ください。
図3:同じ「全集」「揃い物」でも、買取の可否は需要と供給のバランスで大きく分かれます。

第4章:「買取できません」とお伝えするまでの時間

本棚の前で、一冊ずつ手に取りながら、約30分ほど時間をかけて拝見しました。「もしかしたら、揃いの中に思いがけない一冊があるかもしれない」——そんな気持ちで、私自身も丁寧に確認させていただきました。

しかし、結論はやはり変わりませんでした。当店では買取金額をお付けすることができない蔵書でした。立ち会ってくださったご親族の方には、その場で正直にお伝えしました。

事前にご依頼者様(電話越しの女性)にも、可能性として「買取は難しいかもしれない」とお話していたこともあり、「やはりそうでしたか。プロの方に見ていただいて、納得しました」と、ご親族を介してお返事をいただきました。

そして、無料での引取をお引き受けしました

本来であれば、買取金額が付かない蔵書は、お客様にお戻しするのが古書店の通常の対応です。しかし今回は——

  • ご依頼者様が県外在住で、再びご実家へ来るのが難しい
  • 200冊という量を、ご親族の方だけで処分するのは大きな負担
  • 「お母様の蔵書を、ただゴミ回収に出してしまうことに気持ちの整理がつかない」というお気持ち
  • 「古書のプロに見てもらった上での決断なら、すっきりお別れできる」というお話

これらのご事情を踏まえ、当店の特別対応として、無料での引取をお引き受けすることにいたしました。約200冊、店主とスタッフで運び出しを行い、本日中に引取を完了しました。

補足:当店の無料引取の基本的な考え方

当店の無料引取は、以下のいずれかに該当する場合の個別判断による特別対応です。
① 買取品が一定量あり、その買取品と一緒に処分困難な本もまとめてお持ち帰りできる場合
② ご依頼者様のご事情・お気持ちに、古書店として寄り添うべきと判断した場合
③ 店主の判断で、社会的・文化的な意義を見出した場合

原則として、買取と無料引取はセットで成り立つサービスです。買取対象外の本のみを大量に処分するご依頼は、産業廃棄物処理業者の業務範囲となるため、当店ではお引き受けできない場合がございます。

第5章:本日のご依頼から、お伝えしたい3つのこと

本日のご依頼は、買取金額という意味では「0円」のお仕事でした。しかし、古書店という仕事の本質を改めて考えさせられる、大切な一日でした。ブログをお読みの皆様にお伝えしたいことを、3点に絞ってまとめます。

① 県外在住でも、ご実家が広島県内ならご相談ください

「県外に住んでいて、広島県内の実家の整理を進めたいけれど、何度も通えない」——このようなお悩みは、近年とても増えています。当店は広島県全12市・全域に出張買取で対応しております。ご依頼者様が県外でも、現地で立ち会っていただける方(ご親族・代理人など)がいらっしゃれば対応可能です。事前のお電話で、ご蔵書の内容・量・所在地を詳しくお聞かせいただけると、スムーズに進めることができます。

② 「買取できない本」は確かに存在します

すべての本を買取できるわけではありません。文学全集・古い百科事典・大量出版された実用書・タバコ臭やカビの強い本・極端に古い雑誌などは、状態が良くても買取が難しいケースがあります。これは古書店の都合ではなく、現在の中古市場の需要と供給のバランスから来るものです。事前のお電話で、ご蔵書の中身を伺った段階で「これは難しいかもしれません」と正直にお伝えすることもございます。それでも構わない、一度プロに見てほしいというお気持ちであれば、可能な限りお伺いいたします。

③ 無料引取は「お約束」ではなく「特別対応」です

これは本日特に強くお伝えしたいことです。当店の無料引取は、すべてのご依頼にお応えできるサービスではありません。買取品があってこその無料引取、もしくは特別なご事情に対する個別判断としての対応です。「とにかく無料で大量に引き取ってほしい」というご依頼は、産業廃棄物処理業者または市町村のゴミ回収サービスのご利用をお勧めいたします。古書店は、本を商品として次のお客様にお繋ぎする仕事——そのことを、本日改めて肝に銘じる機会となりました。

ご依頼前に、もう一度大切なお願い

本記事は買取実績の報告と、古書店の仕事への正直なお話を兼ねたものです。本記事の内容をもって「アッシュ書店は無料で何でも引き取ってくれる」とご理解されますと、双方に行き違いが生じてしまいます。当店は古書店であり、不要書籍の処分業者ではありません。ご依頼は「買取をご希望の蔵書整理」を前提とし、無料引取はあくまで買取品とのバランスやお客様のご事情を踏まえた個別判断による特別対応であることを、何卒ご理解のほどよろしくお願いいたします。

本日のまとめ

  • 2026年5月18日、広島県尾道市因島町のお宅で蔵書整理にお伺い
  • ご依頼主は県外在住の高齢女性——お母様の蔵書整理のため
  • 呉市本店から因島町までしまなみ海道経由で車で約2時間
  • 拝見した蔵書:文学全集・古い百科事典など約200冊
  • 状態は良好だったが、市場の需要と供給の関係で買取は困難
  • お客様のご事情とお気持ちに鑑み、特別対応として無料引取でお引き受け
  • 無料引取は当店のお約束ではなく、個別判断による特別対応です
  • 県外在住でも、現地立ち会いの方がいらっしゃればご相談可能

本日のお客様、お母様の大切な蔵書をお預かりさせていただき、ありがとうございました。これらの本は、当店にて責任を持って次の段階へとお繋ぎいたします。「すっきり決断できた」というお言葉が、何よりも温かいお礼でした。

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